なちかつ
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 現代社会においてその国の「伝統文化」などと称されるものは、じつは近代化の過程で創られてきた新しいものだそうだ。日本社会の伝統なるものも明治以降に形成されたものが多い。著者は本書で、雇用や行政、教育や社会保障などから、日本社会を規定する社会意識がどのように形成されてきたかということについて論じている。論点がぶれない緻密でていねいな仕事だ。外国との比較で日本社会の特徴(年功賃金、企業内労働組合など)がよくわかる。

 つい先日消費税が10%に上がった。賛否両論あまたある中で、妥協点、着地点をさぐりつつ社会は形成されていく。しかし、そこには正義と人びとの合意がなければならない。社会の「しくみ」とはそうして定着していったルールの集合体である。

 長い読書の最後に課題が出された。スーパーの非正規雇用で働く勤続10年のシングルマザーが、「昨日入ってきた高校生の女の子となんでほとんど同じ時給なのか」と相談してきたという。これに対してあなたはどう答えるか。①年齢や家庭背景を考慮した賃金が支払われるべきだ。②同一労働同一賃金の原則により同じ賃金であるべきだ。③賃金については同じなのはやむを得ない。児童手当や社会保障政策で対応すべきだ。さて、社会の合意はどこに落ち着くか。

2024年 (令和6年)
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