なちかつ
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 鬼やもののけが跋扈し、夜の闇が今よりはるかに濃かった平安時代の京都五条河原を舞台にしたファンタジー作品。

 五条河原に架かる橋を渡った先の荒れ寺の古井戸は冥界への入り口であった。妹を亡くして失意の日々を送る少年小野篁(おののたかむら)はその古井戸から冥界へと迷い込み、現世との間を行き来する。西洋のファンタジー作品の多くが善対悪の世界を描いているのに対して、この作品は、篁の揺れる心を通して、鬼とは何か(その対極の人とは何か)を描いていて秀逸だ。死してなお休むことを許されぬ坂上田村麻呂将軍、河原で気丈に生きる浮浪児阿古那(あこな)、阿古那のために懸命に人になろうとする鬼の非天丸(ひてんまる)、冥界の入り口で人を食う馬鬼・牛鬼、思春期の篁と対峙する父小野岑守(みねもり)など、登場人物はみな個性的でくっきり描かれている。文学的で味わい深い文章の情景描写もすばらしく、冥界の情景などもさもありなんと思わせてくれる。

 書名のとおりの超入門書。海岸で棒を拾ってそれに糸と針を結んで釣りをしようというところから始まる。深さ30㎝の潮だまりでカサゴを釣る、シンプルなのべ竿の渚釣りでキスを釣る・・。なぜそんな簡単なやり方で魚が釣れるか、なるほど、波打ち際や防波堤のきわは栄養が豊富で魚の餌も多いから、と目からうろこの説明だ。試してみようという気になった。まだ寒さ厳しい2月の磯で、細いナイロン糸を竿先にしばりつけ、針とガン玉をつけただけの仕掛けに餌は磯のヤドカリ、潮だまりを歩いてみた。まさか釣れるとは思わなかったが、やはり釣れなかった。残念。なかなか本のとおりにはいかないようだ。でも、細いきゃしゃな渓流竿で本当にキスをかけたら、あのブルブルッとくる引きをダイレクトで味わえたら、文句なく楽しいと思う。また挑戦してみよう。なかなか刺激的な本だ。

 沖縄の離島で、家族の縁薄く、一人暮らしの友寄明青(あきお)。亡くなった祖母から受け継いだ雑貨店を細々と営んでいる。飼い犬のカフーと裏の向かい家に住む巫女のおばあだけが家族のような存在だ。小さな島ではリゾート開発の話が持ち上がり、明青やおばあら一部の反対派を切り崩しながら進められていた。明青は心の奥に、彼が小学生のとき家を出て行ったきりの母の帰りを待つ思いを秘めていた。そんなある日、このパッとしない独身男のもとへ「わたしをあなたのお嫁さんにしてください」と一人の女性がやってきた。名前は幸(さち)。美人だ。「雪女」や「つるにょうぼう」じゃあるまいし、今どきそんなおとぎ話があるもんか。どんな展開になるんだと読んでいくと、まるでミステリーのトリックが明かされるように終末で物語の全体像が一気に立ち上がる。とても緻密に構成された作品だ。しかし、それ以上に、ともに孤独な明青と幸のぎこちなく揺れる恋心に胸を打たれる。また、筆者の短くてキレのある文章は、読者をぐいぐい物語へ引き込んでいく力がある。

2019年 (平成31年)
2月20日(水)
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