なちかつ
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 1939年、第二次大戦が勃発し、イギリスのロンドンにはドイツ軍による侵攻、空爆の危機が迫っていた。母親の虐待から逃げるように弟といっしょに疎開列車に飛び乗った11歳の少女エイダ。エイダは生まれつき足首が奇形で歩くことができず、母親から外に出ることさえ許されていなかった。およそ人間らしい生活からほど遠く、心も荒んでいた。疎開先の英仏海峡に面した村で、姉弟はスーザンという一人暮らしの女性に預けられる。「子ども嫌い」というより人に心を閉ざしていたスーザンは、戦時下の特殊な状況の下、強制的に疎開の子どもたちを引き受けさせられたのだ。が、月日が経つにつれエイダは少しずつ人間らしさを取り戻していき、スーザンの閉じていた心、だれかを愛する気持ちも徐々に開かれていく。作品ではその過程が実にていねいに描かれていく。一筋縄ではいかないのだ。いくつもの衝突を迫真の叙述で描きながら、じれったいほどゆっくりと。姉弟とスーザンの3人をとりまく人々やエイダの愛馬バターの存在も重要だ。心を通わせる関わり合いの中で、それぞれが自分の運命と戦い、お互いを愛し、人間らしい生活を築いていく。物語の終末に急な転回があるが、最後は感動的な結末を迎える。

2024年 (令和6年)
12月22日(日)
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