なちかつ
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 北海道から九州まで、列島の沿岸には50基を超える原発がある。が、和歌山県から三重県にかけての紀伊半島沿岸にはそれが1基もない。かつて昭和40年代、この地域にも原発建設の動きが起こった。計画を推進しようとする関電、国、県、首長らに対して、住民たちが粘り強い反対運動を展開し、結局原発は建設されなかった。本書はその記録である。

3.11後の今でこそ原発の安全神話は崩れ去ったが、経済が高度成長を遂げていた当時、国策に逆らって反原発を貫き通した先人たちの強さにまず驚いた。賛成派にしろ反対派にしろ地域の発展を願わない人はいない。地域住民や親戚までもが真っ二つに分かれていがみ合った何年もの期間は、たいそう辛いことであったろう。しかし、原発は危険だ、地域のためにならないと反対する人々は、県内外のたくさんの人々とつながり、専門家を招いて学習を重ね、学習したことを地域に広めるという活動を地道に展開していった。その結果、紙一重、本当にぎりぎりのところで原発をくい止めたのだった。自分で考え、判断し、行動する。そして連帯する。地域社会の重大事に臨んで、そういう真面目さを今の私たちも持っているだろうか。

 

2024年 (令和6年)
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