この国では、いわゆる近代国家となった明治以降、時代を元号で区切って見る傾向がある。社会の問題や課題は切れ目なく続いていくのに、「新しい令和の時代が始まった、平成のことは過去のこと」とするのは危険だ。本書は、政治や事件、教育、外交などそれぞれ担当とする領域で社会の動きを追ってきた記者たちによる平成30年間の記憶であるとともに、現在の私たちの立ち位置を確かめる試みである。表紙には、新自由主義、自己責任、新しい学力観、LGBT、自衛隊海外派遣、多様性社会など平成を読み解くキーワードが並んでいる。この30年間で人と社会はどう変わったか。一読して、総じて息苦しく生きづらい社会に変わってきたような印象を受けた。しかし、明治、大正、昭和のいつの時代でも、私たちはのしかかる社会の重圧の中で、明るい未来をめざして懸命に生きてきたのではないだろうか。
なちかつ
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