なちかつ
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 技量はありながらも小才のきかぬ性格ゆえに「のっそり」とあだ名で呼ばれる大工十兵衛。その十兵衛が、義理も人情も捨てて、谷中感応寺の五重塔建立に一身を捧げる。十兵衛にとって恩もあり名工の源太が当然その仕事を請け負う者と目されていたところへ、十兵衛の魔性のものに憑かれたような一心な想いが食い込んでいく。寺の上人様の公平な裁きの末、人格者の源太は幾度も十兵衛に苦々し思いをさせられながらも最後には十兵衛に塔建立の仕事を譲る。そして十兵衛は立派に仕事を成し遂げる。源太とその妻、十兵衛とその妻、源太の弟子で過ちを犯す清吉とその老母など、登場人物の心の動きの描写が見事だ。文章は文語調の文体で一文がとてつもなく長い。でも、その文体に慣れてくると言葉が生き生きと小気味よく情景を語り出す。

2024年 (令和6年)
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