和歌山「龍神自然食品センター」の梅干しをはじめ、大阪の蒲鉾、琵琶湖の鮒ずし、伊豆のわさび、京都丹後のオイルサーディン、奈良の奈良漬、鹿児島の黒豚、京都の豆餅、沖縄のイラブー汁など、著者が取材した日本のすごい味を紹介している。書かれているのは、むしろすごい味というより、その味を創り出す人の姿だ。いいものをという信念のもと、いっさいの妥協を排してつくられる食品が美味しくないはずがない。筆者の目は、真摯に励む生産者のそのまた向こう、食品を生み出す土地や自然へと向けられる。「ひとつぶの梅干しに凝縮されている土や木々や風、炎天の暑熱、手摘みの労力、紫蘇を揉んで滲むえぐい汁、雲行きを見ながら神経をとがらせる天日干し、いちいちが味の中に入っていることをいやというほど実感する。繰り返し思うのは、この味は、この土地でなければ生まれ得なかったのだという事実。土地を熟知している者が、土地のすごい味を生み出す。」
なちかつ
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