「筋肉は裏切らへん」の決めぜりふでテレビに出ている先生がいる。まったくそのとおりで、コツコツ筋トレに励めば筋肉は太くたくましくなり、成果が目に見えるので達成感、満足感を感じることができる。しかし、著者は、スポーツ選手が競技力、パフォーマンスの向上をめざすとき、それではアカン、筋トレはむしろマイナスになると言う。競技力を向上させるためには、その競技におけるからだの動きのしなやかさ、すなわちからだの各部位を連動させ、その連動性をより密にしていく「全身協調性」を高めていくことが大切だ。筋トレで「つけた筋肉」はおうおうにして全身協調性を妨げる要因となる。必要なのは、その競技の動きを向上させることで「ついた筋肉」である。競技における「全身協調性」を高めるにはどうしたらよいか。それはコツやカンを身につけていくという、非常に感覚的で経験的なことである。筆者はそこに科学的な知見を持ってアプローチしており、説得力がある。このような考え方はスポーツのみならず、広く生きる力を向上させることにもつながると感じた。
なちかつ
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