なちかつ
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 今から百年前、20世紀初頭のアメリカ社会をとらえた写真の数々。19世紀後半からアメリカの産業は活発になり、工場でも鉱山でも、安い賃金で雇えるたくさんの労働者を必要とした。その結果、労働者として働く16歳未満の子どもが200万人もいたという。写真家ルイス・ハインはこのような状態に心を痛め、社会の良心に訴えようと働く子どもの写真を撮り続けた。

 掲載された写真のうち表紙と105Pの写真(同じもの)は強いインパクトを放っている。紡績工場で働く少女。10歳ぐらいだろうか、お下げ髪の子が真っ正面からカメラを見据えて凜としている。写真家は「工場で働いているあなたの写真をとらせてね、カメラの方を向いてくれる?」とか声をかけたのだろう。少女は作業の手をとめ、カメラに向き直った。油で汚れた手が少女の労働を物語っている。その射るような視線、顔つきは今どきの10歳の子どもとはまるで違う。たった1枚の写真から少女の暮らし向き、その厳しさが伝わってくるようだ。その後この子はどんな人生を歩んだのだろう。幸せな生涯を送っただろうか。百年後の今日、世界中の子どもたちは子ども時代を子どもらしく生きているか。その子どもの権利を守ろうとする社会であるか。

 *特別展示「SDGsの本」から 

2024年 (令和6年)
12月22日(日)
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