なちかつ
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 戦争に敗れモラルの焦土と化した日本で、人々がどのようにして「国のかたち」をつくっていったかが克明に著されている。占領、冷戦、朝鮮戦争など国内外の情勢に翻弄される中、知識人、政治家、活動家、歴史学者、教師、文学者、学生、一般大衆らがどのような考えを持ち、どんな言説を残したかをていねいにたどり、戦後日本の歩みを重層的に描き出す。1000ページにせまる大著なので全巻を読み通すのはなかなか困難だが、敗戦直後の天皇論、国民的歴史学運動、戦後教育、60年安保闘争など興味関心の深い章のいくつかを読んでみる。特に印象に残ったのは天皇の戦争責任について書かれた第3章で、そこでとり上げられた一青年の日記だ。青年は当時ごく一般的だった皇国少年で出征もしたが、戦後天皇の戦争責任がうやむやにされる中、天皇への忠誠が反逆へと変わっていった。その生々しい魂の軌跡がつづられている。一般大衆はやはりそのように感じていたのだろうか。この時代のキーワードは「愛国」。国家の再生に向けてさまざまな考えを持つ人たちが、それぞれの「愛国」を掲げてぶつかり合い、戦後の社会が形成されていった。そのつぶさをたどることは読む者の人生にも重なる。

*企画展示『今こそ考えよう日本国憲法(このくにのかたち)』から 

2024年 (令和6年)
4月20日(土)
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