桜の季節も終わり、熊野の山々はモリモリとした新緑の力を感じる季節になってきました。
まさに「空青し山青し海青し」といったところでしょうか。
これは和歌山県新宮市出身の佐藤春夫の『望郷五月歌』の一説ですが、ほかにも『秋刀魚の歌』といった熊野人の香り漂う作品を遺しています。
以下その『秋刀魚の歌』の一節です。
「さんま、さんま、
そが上に靑き蜜柑の酸(す)をしたたらせて
さんまを食ふはその男がふる里のならひなり」
『文豪の家』では、そんな佐藤春夫や、佐藤に妻を譲った谷崎潤一郎、「芥川賞をください」と懇願した太宰治など名だたる文豪の作品が生み出された書斎や筆や硯といった道具まで垣間見ることができます。その空間からは、それぞれの作風に通じるものを感じることができます。
『おしえてわかやま 方言編』では今ではあまり使われることのない方言から、方言だと気づかず使っていて「これって方言だったんだ!」と新発見するものまで、楽しめる内容となっています。
身近にあってなかなか見直すことの少ない「ふるさと」ちょっとだけ見つめてみませんか?また新しい一面に気が付くかもしれませんよ。
NSL(ひつじ)
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- 作成者:NCL編集部
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昔から読み継がれている児童書の名作を読んでみました。
最初は、少し語調が古めかしい感じがするなあと思ってなかなかサクサク読めませんでした。
ところが、これは最後まで読むのは苦痛かなあと思っていたのに、
気が付いたらハマってました・・・!
物語は、ドイツの9年生の男の子達が暮らしている寄宿学校での話です。
男の子ばかりが暮らしているので、それはもう、女子には想像つかないノリが描かれていました。
突然、夜中に幽霊の行列のかっこうをした上級生たちがやってきて、
ベッドの周りを列をなして歩き、大きな袋から謎の粉をまき散らしてみたり・・・。
(粉の正体は、かゆくなる粉?らしいです・・・!)
はたまた、近くの学校の生徒と殴り合いの決闘めいたことまで・・・。
女性からしたら、なんだかバカバカしいノリなのですが、ゆかいな気持ちになって読めます。
この物語では、5人の男の子たちが主人公で、それぞれ悩みを抱えています。
それぞれの個性で、その悩みに向き合っています。その真摯な姿は、とても心を打たれます。
ああ、子どもたちは、こんなにまっすぐに真剣に
かけがえのない今という時を生きているのか・・・!
と、大人になった私たちが思い知らされるような力のある作品なのです。
私は、不覚にも、何度も涙がにじんできました。
私が心をつかまされたのは、マルティンという男の子のくだりです。
マルティンに起きたどうしようもない状況、
それに向き合って心がちぎれそうになっているマルティンの深い悲しみと
くじけないひたむきさ、思いがけない展開、
この一連のストーリーに心を奪われました。
読後感は、満たされた思いでお腹がいっぱいです。
このような作品を描いた、ドイツの作家ケストナー氏を尊敬します。
そして、かつてドイツのナチス政権下で焚書にあったこの本が、
今読めることを幸福に思います・・・。
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