「子どものころ、わたしは毎年、母の郷里で夏休みの数日間を過ごした。その、なんでもないはずの田舎ぐらしの中で経験した幼小年期独特の奇妙なできごとを、いま記憶の底からすくいあげておこうと思う。」
児童文学者の著者は1952年生まれ。本書は著者の幼いころの記憶をもとに書かれたものだが、はたしてどこまでが本当の出来事でどこからが幻か、まさに幼い日の記憶のようにおぼろげで不思議な話の数々だ。都会暮らしの子どもにとって、母親の田舎で過ごす夏休みの日々は、妖怪や超自然現象が起こる豊かな世界だった。現代でもこの本に書かれてあるような出来事が、ふつうに語られる時代であればいいのに。