赤ちゃんに語りかける絵本。こんな絵本で大人が赤ちゃんに語りかけることが本当に大事だと思う。機械に子守をさせてはいけない。赤ちゃんが喜ぶ同じ動作の繰り返しで、カエル、ねこ、いぬ、バッタなど身近な小動物への関心を持たせながら、カタツムリのフェイントも入れている。動物たちはまっすぐ正面から赤ちゃんを見つめ、ジャンプする体勢をとっている。そして赤ちゃんの期待どおり「ぴょーん」と跳び上がる。この「ぴょーん」の音も楽しい。同じようで少しずつちがう。赤ちゃんは「ぴょーん」という言葉をたしかなイメージで自分のものにしていくだろう。よく考えられた本だと思う。
- 詳細
- 作成者:NCL編集部
- カテゴリー: おすすめ本棚
社会学者の著者はこんな小説・エッセイも書く。多才だ。と言うよりも、この本を読めば見えてくるが、ミュージシャン、土木作業員、大学院生などをしてきて、現在は大学に職を得て本なども書いているといったところか。まっすぐ研究者への道を進んだのではない。著者は名古屋の出身だが、大学受験で来た大阪が気に入り、そのままコテコテの大阪人になって生きて来た。ろくに勉強もせず、大阪という街の底を這いずり回った経歴をもつ社会学者が書くものには、そこに生きる人々の体温やにおいというか、何か分厚さのようなものを感じる。
本書は二部構成になっていて、前半の「図書室」は小説、後半の「給水塔」は自伝的なエッセイだ。どちらも大阪賛歌である。著者が言う「大阪の独自性、何にも追随しない自治の雰囲気、好き勝手やってる無秩序な空気、他人にも優しいが自分にも甘いところ、とにかく街全体が反抗やルール違反や独自性で成り立っている大阪という街」であふれている。
- 詳細
- 作成者:NCL編集部
- カテゴリー: おすすめ本棚
下巻は江戸時代後期から戦後まで。文学史とは言うものの、社会史、思想史に係るあまたの資料(農民一揆の檄文も)を取り上げて、時代の社会的背景を踏まえながら述べる。述べるからには当然読んで考察したのであろう、その読書の量と質に圧倒される。また、江戸後期以降は文献が多く残っており、特に明治以降は発表・出版される著作物も膨大なため、著者がだれのなにを取り上げなにを取り上げなかったかも興味深いところである。巻末に上下巻通しの「人名索引」「事項索引」があり、事典のように本文にあたれる。
著者あとがきに、“文学の発展のすじ道は、全体としては、文学外の条件を考慮しなければ、明らかにすることができない。著者はここで、日本の土着的世界観が外部からの思想的挑戦に対して各時代に反応してきた反応の系列を、それぞれの時代の社会的条件のもとで、その反応の一形態としての文学を通じて、確かめようとしたのである”とある。うーん、タフな読書だ。
- 詳細
- 作成者:NCL編集部
- カテゴリー: おすすめ本棚