この国では、いわゆる近代国家となった明治以降、時代を元号で区切って見る傾向がある。社会の問題や課題は切れ目なく続いていくのに、「新しい令和の時代が始まった、平成のことは過去のこと」とするのは危険だ。本書は、政治や事件、教育、外交などそれぞれ担当とする領域で社会の動きを追ってきた記者たちによる平成30年間の記憶であるとともに、現在の私たちの立ち位置を確かめる試みである。表紙には、新自由主義、自己責任、新しい学力観、LGBT、自衛隊海外派遣、多様性社会など平成を読み解くキーワードが並んでいる。この30年間で人と社会はどう変わったか。一読して、総じて息苦しく生きづらい社会に変わってきたような印象を受けた。しかし、明治、大正、昭和のいつの時代でも、私たちはのしかかる社会の重圧の中で、明るい未来をめざして懸命に生きてきたのではないだろうか。
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前作の続き。信州松本の本庄病院に栗原一止の医学生時代の親友進藤が着任してきて、主要な登場人物の一人となる。本巻の主な出来事は、内科副部長の古狐先生の死だ。部長の古狸先生と二人で地域医療を背負ってきた老医師の死をめぐって、生きることの意味が掘り下げられていく。医師も人間として生きるのだ。漱石の「坊ちゃん」と違って、古狸も古狐もいやな人物ではない。堂々たる人格者として描かれている。この作品のおもしろいところは、登場人物すべてが自分の生き方をまっすぐに貫いていて、みんなカッコいいところだ。そしてみな周りがよく見えていて人にやさしい。個人的には一止の妻ハルさんがイチオシ! まぶしいぐらいすばらしい。
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著者は児童文学者にして獣医師。思春期の入り口にさしかかった小学生の男の子と女の子の視点から、小動物(飼い猫)の命を見つめる。生まれて間もない子猫をかわいいと慈しむ気持ち、いつか必ず訪れる非情な死別のとき。どんなに手を尽くしても助からない命と向き合って、子どもたちはそれをどう受け容れるのか。
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