なちかつ
図書館WEB

 

◇新型コロナ感染拡大防止のために <9月1日>

①体調がすぐれないとき、発熱しているときは図書館の利用を控えてください。

②図書館へ来るときはマスクを着用してください。

③入館時には手指の消毒をしてください。

④閲覧・自習は所定の座席で行い、人との距離を保ってください。

 

 

秋の夜長・・、本読も!

Site Top

 装丁、写真、文章、どれもが落ち着きと気品に満ちた上質な本。ゆっくり1ページ1ページを読んでいくと、まるで雰囲気のいい珈琲店で極上の一杯を味わったような深い満足感を得る。珈琲を淹れる道具の話から始まり、淹れ方、豆の精選や焙煎のこと、珈琲豆のふるさとエチオピアの話、そしてさまざまな珈琲の愉しみ方へと話は続いていく。一杯の珈琲にたどりつくまでの実にたくさんの手間。おいしい珈琲を飲んでもらいたい、飲みたい、という思いをもった人たちの幾重もの手間こそが、珈琲の奥深さだと知る。「珈琲であれ、もしくは料理、菓子であれ、相手のために丁寧に作られた愛ある食べ物からは、美味しさはもちろん、それだけではない感情を受け取ることができます。飲み手のことを考え、意思や思想がこもった珈琲こそ美味なものでしょう。相手を想う真面目さと美味しさを求める行為は深く繋がっているのではないでしょうか。少し珈琲の世界を深めて、あなたらしい味のある珈琲を作っていただければ、嬉しいです」とは、筆者の人柄がにじみ出る。

 自分かどんな死を迎えるか、それは誰しもわからない。この作品の主人公雫のように、まだ十分若くして、しかし確実に迫り来る死と向き合って日を送らなければならなくなったら・・。恐怖、苦痛、絶望、虚無感に打ちひしがれても、それでも残された時間を精一杯生き、幸せに最期を迎えることができる。作品では、死にゆく人に真心をもって寄り添い、最後までその人の尊厳を守り通そうとする人たちの姿が描かれている。その仕事ぶりと精神性の尊さに胸を打たれる。

 「おやつの時間をあなたが毎回とても楽しみにしてくれたことが何よりの慰めです。おやつは、体には必要のないものかもしれませんが、おやつがあることで、人生が豊かになることは事実です。おやつは、心の栄養、人生へのご褒美だと思っています。ごちそうさまでした、って、あなたは確かにそう言いました。いかにもあなたらしい、情の深い、美しい言葉。きっと、あなたの人生そのものが、おいしかったのでしょう」

 百年後のわたしたちには容易に読み進められないけれど、何とも流麗な文体。注なくしては理解しえない言葉の数々。さして長くもない作品をどうにか読み通してみると、作品の舞台である東京は吉原遊郭界隈のようす、そこでの悪ガキグループどうしの抗争、一方のグループで中心的な存在の少女大黒屋の美登利、その自由闊達な振る舞い、敵対グループの中心だがおとなしい少年龍華寺の信如、美登利の信如へのほのかな恋、そして突然美登利に訪れた少女時代の終わり、などを読み取ることはできる。しかし、巻末の解説の手引きで作品の味わいはうんと深まる。作者樋口一葉がその短い生涯でどんな世界を見つめていたか、その視点を作品に重ね合わせてみると、お侠(おきゃん)な美登利の変調がこの上もなく切ないものに思えてくる。

 *「日本近代文学大系第8巻樋口一葉集」は詳細な注がありわかりやすい。

2020年 (令和2年)
9月19日(土)
Weather
9:00~17:30