なちかつ
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 “I shall be Emperor.”(私は天皇になります) これは先の天皇明仁が15歳の春、学習院高等科の英語の授業で、「将来、何になりたいかを書きなさい」という課題に対して英語で書いた回答だそうだ。「普通の日本人だった経験がないので、何になりたいと考えたことは一度もありません」と、後にその心境を語っている。

 明仁天皇は現憲法のもとで即位した初めての天皇である。天皇となる宿命のもとに生まれたということは、自由に人生を生きられないという意味において、あるいは絶望的なことだったかもしれない。ならば彼はいかにしてその「天皇」を生きようとしたか。本書から伝わってくるのは、象徴天皇としての生き方を真摯に追求した一人の人間の姿だ。天皇明仁が日本国憲法を遵守することにおいてこれほど誠実であったとは・・。それは具体的には、戦没者慰霊の旅、沖縄への慰霊、災害に苦しむ国民への寄り添い、近隣諸国への謝罪の意を込めたメッセージ、戦争をしない国への願いに満ちた言葉などの形で表された。

*企画展示「今こそ考えよう日本国憲法(このくにのかたち)」から 

 著者はわな猟の猟師。主にねらうのはイノシシとシカだ。本書ではわなの仕組み、わなのしかけ方、獲物の解体方法などが、豊富な写真と絵でわかりやすく紹介されている。読んでいて、何というか少し精神的な負荷を感じるのは、わなにかかった獲物にとどめを刺すところ、その動物の命を奪う場面だ。小さな虫や魚ならまだしも、大きな動物になればなるほどその命を奪うことは残酷なことに思われる。しかし、私たちはその動物の肉をおいしくいただいている。捕獲、屠殺、解体の過程に関わることのない私たちは、肉を食するときその動物の命を意識することはほとんどない。それが意識されるのは殺すときだ。獲物の急所をこん棒で力いっぱい殴りつけ、動きがとまったすきに素早くナイフで心臓を突き刺す、または頸動脈を切る。その行為は残酷か。ならば私たちは命をどのようにいただくべきか。この本はそんなことを問いかけてくる。

 主人公の少年サミはじじと二人、難を逃れてアフガニスタンからアメリカにたどり着いた。敬虔なイスラム教徒のじじは民族楽器ルバーブの名手だ。そのルバーブがサミのちょっとした隙を突かれて何者かに奪われ、楽器店に売り飛ばされてしまった。サミは何とかそれを買い戻し、じじの手に帰したいと、じじに内緒でお金を貯めるための取引を始める。幾多の困難に立ち向かうサミ。そのサミの奮闘記を通して描かれているのは、アフガニスタンの人々への敬愛、紛争地から逃れてくる難民の姿、アメリカでの善意ある人たちとの出会い、そして肉親への愛・・。サミは生きるうえで真に大事なものを得る。

2021年 (令和3年)
5月18日(火)
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