なちかつ
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 パリに実在する女性救済施設を舞台に、現代社会における女性の貧困、人権問題と、そこに立ち向かう人々の姿が描かれる。主人公は二人の女性。ソレーヌ、気鋭の弁護士だった。クライアントの自殺をきっかけにうつになり、その治療もあって施設でのボランティアを勧められた。彼女の目を通して、会館に住まう女性たちのさまざまな苦難があぶりだされていく。もう一人はブランシュ、およそ百年前、施設設立のために命がけで奮闘した。現代と過去が交錯する物語は、読者に同じ時代に生きるものとして何ができるか、何をすべきかを問いかけている。「森の大火事のとき、一羽のちいさなハチドリだけがせわしなく嘴に水をたくわえ炎に水滴をかける。憐れなばか者、そんなことしたって火は消えない。わかってる、とハチドリは答える。だけど、せめて自分にできることはする。」

 著者は1943年生まれで、外交官、国際情報局長、イラン大使、防衛大学校教授などを歴任。外交の現場をつぶさに見てきた著者が、日米関係を軸に戦後日本の歩みを語る。本書の柱は次の2点。①「日本の戦後史を動かす原動力は、米国に対するふたつの外交路線です。戦後の日本外交を動かしてきた最大の原動力は、米国から加えられる圧力と、それに対する自主路線と追随路線のせめぎ合い、相克だったということです」、②「米国の対日政策は、世界戦略の変化によって変わります」 著者は外交官として「日本には日本独自の価値がある。力の強い米国に対して、どこまで自分の価値をつらぬけるか、それが外交だ」という立場をとってきた。かつてはそれが日本の外務省の中心的な思想であったが、いまではすっかり失われてしまったという。著者による歴代首相の「自主派」「追随派」の色分けも興味深い。

 戦後75年、日本は米国の圧力に翻弄され続けてきた。現在のわが国の基地問題、自衛隊の海外派遣、集団的自衛権、TPP、国連核兵器禁止条約の問題などを見るに、日米関係を抜きにして考えることはできない。著者は主権国家への強い思いを込めて次のように述べている。「この本の知識が日本人の常識になれば、新しい日本が始まります」

*企画展示「今こそ考えよう日本国憲法(このくにのかたち)」から

 ブレグジットで揺れたイギリスのおっさんたちの話である。登場するおっさんはみな60代で著者の連れあいの幼なじみだ。著者言うところの“地べた”を生きてきた、れっきとした労働者階級のおっさんたちである。彼らの多くは今回のブレグジットで離脱票を投じ、まさかの結果をもたらした“裏切り者世代”と非難されている。しかし、おっさんたち一人一人にそれぞれの人生があり、それは英国が「ゆりかごから墓場まで」といわれた福祉国家から、現代の新自由主義社会へと変化した時代の流れと無関係ではない。本書の原題というか英語の書名は“Still Wondering Around The Wild Side (いまだにワイルドサイドをさまよっている)”となっている。still(いまだ)には、いい年をして成長しないという、おっさんたちへのあきれたようなニュアンスがある。また、wonderingをほっつき歩くと表現した著者は、そのおばちゃん感覚全開で、これら愛すべきおっさんたちへのウオッチングを試みる。英国のEU離脱を書いた本は数多くあるが、この本はまさに地べた、庶民の目線で現在のイギリス社会を描いている。それが不思議に日本のおっさんの共感を呼ぶ。

2021年 (令和3年)
5月18日(火)
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