昭和30年代生まれの自分には昭和33年がそう遠い昔とは思えない。しかし、その年売春防止法ができるまで、江戸遊郭のイメージで前近代的な遠いことのように思えた売買春は合法だったということか。禁止法ができたからといってそれがスパッとなくなったわけではない。そりゃそうだろうと思う。公娼は消えたかもしれないが、しぶとく非合法の私娼は続いた。でも、驚いたのは274ページの写真。2005年黄金町界隈を撮ったその写真に、「売春飲食店を撲滅し、明るく住み良い街に」という啓発看板がでかでかと写っている。バイバイ作戦と名づけられたこの地域浄化運動が始まるまで、黄金町を中心に250軒の店舗、約500人の“女たち”がいたという。
本書は、敗戦直後の横浜で発生した社会問題である混血児の問題を掘り下げている。筆者の言う戦後横浜の闇は、米軍を中心とする占領軍が進駐してきたところから始まった。そしてその源流は、幕末、横浜が開港地になったところまでさかのぼる。この人間社会の深く暗い闇をつくりだしているのは何なのか。戦争、差別・偏見、貧困・・?同じ根っこの闇は、沖縄、東南アジアにもつながっている。
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- 作成者:NCL編集部
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ナルニア国ものがたりの1冊だが、この作品のラストはえもいえぬ美しさで、ひときわ強く印象に残る。ナルニア国から冒険の旅に出た朝びらき丸は東へ東へと航海を続け、いくつかの冒険を経て穏やかな「この世のいやはて」の海へ。日ごとに朝日はまぶしく輝きを増し、鏡のような水面はますます澄みわたっていく。水深はだんだんと浅くなり、やがて見渡すかぎりのまっ白なスイレンで水面がおおわれた場所に至る。朝びらき丸から別れ、小さなボートに移った子どもたちはスイレンの水面を静かに進んで行く・・。最後にもう一度姿を現したアスランと子どもたちの会話に深い意味が込められている。空想の世界と現実とを行き来できる子どもだけの特権。作品はその二つの世界の境界を見事に描き出している。
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富山市内から電車で15分、自動車でも約20分の場所に北陸で唯一の村、舟橋村があります。人口約3000人のこの村は、平成に入って人口が倍増、15歳以下の人口に占める割合が日本一になるなど、この村ならではのまちづくりが進められました。平成29年に富山新聞の地域記者がこの村を一年間にわたって取材。地域づくりから教育、農業や健康まで幅広い分野を取材しながらこの村の軌跡を紹介しました。
その取材の場に出くわしたのが那智勝浦町の教育委員のみなさんで、富山鉄道の駅舎に併設された図書館で、図書館長さんと教育長さんからお話を伺っていた時でした。その模様は本書にも取り上げられています。この図書館は玄関で靴を脱いで上がります。暖かい木のぬくもりがじかに伝わってきます。入ってすぐのフロアは絵本にもなったカモシカが入ってきた児童図書のコーナーです。登録者は15000人という人数からもわかるとおり、周辺地域からも親しまれている図書館を作り上げています。ゆっくりとくつろぐことができる居場所として、そして若いお母さん方の情報交換の場として、この図書館の機能は発揮されている。村長さんや教育長さんが子供たちに絵本の読み聞かせをするという素敵な村。そんな村の奇跡がこの本には詰まっています。<まぐろ記>
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