その夜、那智勝浦町立図書館は明々と電灯が灯っていた。間もなく到着する客人を今や遅しと待ち構える関係者と聴衆。それは、図書館というよりはコンサート会場やプロレス会場のノリであった。玄関前にその男を乗せた自動車が到着。降り立ったのは、まだ見ぬ強豪、この本の著者、内野安彦氏であった。玄関に流れる入場テーマ曲 ドゥービーブラザースの「ロング・トレイン・ランニン」 時は平成27年4月、那智勝浦町立図書館を取り巻く熱い人々が那智勝浦町につどい、熱く図書館の未来を、そしてまちの未来を語り合った。その模様は著者が詳細に書いてあり、その時の熱気が伝わってくる。
この本は書名のとおり、ひとが図書館の魅力を最大限に引き出していることを語りつくしている本です。決してプロレスラーの著書ではありません。<まぐろ記>
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- 作成者:NCL編集部
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「社会学を研究するやり方にはいろいろあるが、私は、ある歴史的なできごとを体験した当事者個人の生活史の語りをひとりずつ聞き取るスタイルで調査をしている。」 本書はそんな著者がどうしても分析も解釈もできないことを集めて言葉にしたものとのこと。まさに断片的なとるに足らないような短い話が、いくつも収められている。だが、世の中というものは、そうした無意味とも言える断片が集まってできている。
本書の中の「断片」の一つ「手のひらのスイッチ」は、著者の個人的な悩み、しかしだれにでもありうる悩みを、ごくふつうの社会のありようから排除されるものとして掘り下げた考察をしており、ハッとさせられた。私たちがふつうに持っている幸せのイメージは、ときとして、いろいろなかたちでそれが得られない人びとへの暴力になる。またしかし、歴史的に多数の人びとの合意によって形成されてきた価値観で社会は成り立っている。だから難しい。著者の言うように、せめて主語を「私」にして、だれも排除しない語り方をするしかないのだろうか。
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コートから外れて落ちてしまったもも色ボタン、アパートのドアのノブさん、バイオリンを作る途中で削り取られた木片、男の子の筆箱の中の赤青えんぴつなど、小さな無生物たちが主人公の短編集。ふだん注意すら向けないモノたちがこんな思いをもっていたのかと、不思議で新鮮な気持ちに包まれる。自由に想像することのおもしろさを。
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