文は映画監督の大島渚氏が小学生だった息子の宿題で書いたもの。どういうことかというと、息子さんの小学校で、お父さんかお母さんにたのんで子ども時代の思い出を書いてもらってくださいという宿題が出されたそうだ。氏はそれにこたえて自分の子ども時代の出来事を淡々と作文に書いた。それがそっくりこの絵本の文になっている。
大島氏は1932年生まれ。子ども時代の思い出は戦争と結びつく。けんかが強くてほがらかなさかいくん、色の白いやさしい先生、この二人の人物との関わりで話は展開する。
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ひとつのとてつもなく大きな出来事に対する人々の在りようを文学という方法で記憶しようと試みた偉大な仕事。1986年4月、ソ連で史上最悪の原発事故が起こり、広い地域が放射能で汚染された。その事実の一面は科学的な報告書等で知ることはできるが、またもう一つの、しかし、人々の精神にどのような影響を及ぼしたのかという事実はどんな方法で留めればよいのだろう。石牟礼道子の『苦海浄土』に似た作品のあり方だ。石牟礼は取材したことを自分の文章で書いたが、アレクシェービッチはテープ起こしをするかのように、インタビューした人の語り口で書いている。冒頭に事故直後の処理にあたって命を落とした若い消防士の妻の語りがある。それを読んだだけで、はるか遠くの国で起こった出来事が、自分の周りのことのように感じられる。文学の力はなんと大きい。
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ギャングがはびこる町に暮らす黒人で女子高生のスター。ある晩、スターと一緒にいた幼なじみのカリルが白人警官によって一方的に射殺されてしまう。彼女の目の前で起こったこの事件は、事実と異なって報道されていく。事件によって徐々に変わりゆく周囲と、スター自身の心。スターは覚悟を決めて立ち上がる。カリルの声となるために。
現代アメリカ社会の暗部を鋭く描き出した作品。根深い人種的偏見、貧困、ドラッグ、暴力、銃・・、“The Hate U Give Little Infants Fucks Everybody”<子どもに植えつけた憎しみが社会に牙をむく>。この悪循環、負の連鎖を人びとは断ち切ることができるのだろうか。物語はハッピーエンドにはならないけれど、スターが前を向く姿に小さくとも確かな希望の灯りを感じて、さわやかな読後感を得る。作品ではスターの両親、家族、親戚、学校の友達、ボーイフレンド、弁護士などいずれも個性的な人々が登場する。彼らのしゃべり言葉や行動がとてもリアルに描かれていて、現代のアメリカ人の日常を目の前で見るようだ。
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