国際霊柩送還とは、海外で亡くなった日本人の遺体や遺骨を日本の家族のもとへ送り届けること、またその逆で日本で亡くなった外国人を祖国へ送還することだそうだ。著者は、国際霊柩送還の専門会社エアハース社社長の木村利惠をはじめ、家族経営的なこの会社の社員たちを取材し、「人は死んだらどうやって故国へと帰るのか。どんな人がどんな想いで運んでいるのか。国境を越えた地で亡くなると、家族はどんな想いを抱くのか」を追求している。
事件、事故、あるいは紛争などに巻き込まれ、異国で命を落とした人を、本国まで送還し、家族に届けるという仕事のなんと大変なことか。国情も宗教や習俗も異なるさまざまな国がある中、関係者に連絡を取り、必要な手続きをし、航空便の手配をし、遺体を空港で受け取る。そして本書に書かれてあるとおり、多くの場合、腐敗が進み傷んでいるであろう遺体にていねいな手当てを施し、安らかな姿に戻してから家族のもとへ帰すのである。ため息が出るようなプロフェッショナルな仕事ぶりだ。エアハース社の社員たちの仕事の根幹には、たとえもの言わぬ死者であってもその人の尊厳を最後まで守りぬこうとする崇高な精神がある。それが彼らの誇りであり、また、その誇りがなければこんな厳しい仕事はできないのではないか。人が海外で亡くなるということは、ほとんどの場合、その家族にとっては予期しない出来事であり、突然の悲しみに襲われることになる。そのとき遺族はどんな想いを抱くのか。それはもちろん一様ではないが、遺族がきちんと亡くなった人に向き合い、「さよなら」を言うための機会を用意するのも国際霊柩送還の仕事なのだそうだ。そのために、できるだけの手当てを尽くして、「行ってきます」と家を出たときの顔、姿にするのだという。
私たちの社会は、こんなよい仕事をしようとする人たちに支えられている。
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この物語の真の主人公は森宮さんだと思う。森宮さんは最後と最初だけ一人称で登場してくる。最後の場面を読んでもう一度最初の1ページを読むと、それが優子の結婚式の朝のことだとわかる。優子には父親が三人、母親が二人いる。家族の形態は十七年間で七回も変わった。まるで大人たちが優子の親という立場をバトンパスするかのように。森宮さんは35歳のとき、15歳の優子の父親になった。それから8年間、優子が結婚するまで「森宮さん」、「優子ちゃん」と呼び合う父と娘の生活が続く。家族とは、親子の関係とは? 作者はややもすると重くなるこのテーマを、実に軽いタッチで描いていく。カツ丼に、オムレツ、餃子、ふり返れば食べ物の場面がふんだんに出てきた。家族とは、親子とは、いっしょにご飯を食べる関係なのかも?
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長田弘さんの詩は、平易な言葉でありながらはっとさせられるような問いかけの連続で、自然と自分の内面へと目を向けさせられる。そこにいせひでこさんの、やはり心の情景を描いたような淡い絵が合わさってすばらしい絵本に仕上がっている。青少年~大人のための絵本。
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