「独居老人」「孤独死」など、まるで「ひとり」が社会悪であるかのような昨今の風潮がある。ひとりでいることは悪いのか。そうではないだろう。今の時代ひとりで生きるという意識、覚悟が希薄になってはいないか、というのが著者の思索の始まりだ。「ひとり」は「孤独」とは違う。ひとり座る、ひとり考えるの心構えをもった自立した人間として、社会の中で生きるということだ。筆者はそのいくつかの典型を鎌倉時代の親鸞、道元、日蓮、法然、一編らに見出す。彼らの思想については、にわかには理解に至らないが、当代随一の宗教哲学者の手引きで彼らの「ひとりの哲学」をたどるのはそれなりに楽しい読書体験だ。わたしも「個」として自立し、「ひとり」で生きていく確固たる基盤に立つことのできる人間でありたい。ふだん思いもしないことをちらっと思った。
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単なるレシピ本ではなく、食材としての魚について幅広く解説している本。読み物としておもしろい。第2章「魚料理は下処理で決まる!」では、魚料理の大敵である生臭みの原因とその対処方法が、理詰めにていねいに書かれている。最大の敵は水分だったのだ。流水で手早く洗ってしっかり水分をふき取ること、これが大切だ。キッチンペーパーではもったいないからと、著者は洗車用の吸水布を使うそうだ。へぇー。第3章「魚がおいしい5つのしくみ」では、調味とは、生とは、焼くとは、煮るとは、揚げるとは、蒸すとはと、それぞれの調理法の原理を説く。だからどんな魚であろうと、基本的にそれをふまえて料理ができるということだ。とても参考になった。
しかし、箸を持つ指先の、その日の釣りでこびりついたオキアミのにおいばっかりはどうしようもない。
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「ことばは沈黙に 光は闇に 生は死の中にこそあるものなれ 飛翔せるタカの 虚空にこそ輝ける如くに」
少年ゲドは自分に並はずれた魔法の才能があることを知り、その思い上がりから、禁じられた魔法で自らの<影>を呼び出してしまう。影は邪悪の象徴、「かのもの、内にありて男をむさぼり食らい、やがて男の姿にて世を歩き、あまたの人を破滅に導きたり」というものであった。影との戦いに敗れれば、ゲドは全き人間になれず、世に害をなす存在になってしまう。だれにも代わってもらえない、だれにも助けてもらえない、ゲド自身の影との戦いが始まる。困難な戦いが。
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